ぼくらは群青を探している
 何をするのかはさておき、蛍さんの誕生日なんて初耳だ。近いなら誰かが言ってくれてもいいのに、と思ったものの、男子が互いの誕生日を気にしてるなんて (それこそ桜井くんと雲雀くんが同じ誕生日であるように)特別な事情がなければないものなので、そんなものかもしれない。

 それに、蛍さんも至極どうでもよさそうな顔をしている。横柄に股を開いて頬杖をつき「高三にもなって誕生日祝うかよ。小三じゃねーんだぞ」なんて悪態を吐いている始末だ。


「……でもまだ十八歳じゃないですか。お祝いしてもいい年だと思うんですけど」

「年下が何言ってんだよ。大体こいつらの言う祝いってケーキ買っておうちでお誕生日会とかじゃねーぞ、バイク乗って旗差して走り回んだぞ」


 ……それは、私は参加できなさそうな誕生日だ。お世話になってる先輩の誕生日をぜひ祝おうなんて気持ちになっていた自分がすたこらさっさとどこかへ消えてしまった。

 とはいえ、誕生日会に参加する以外にも誕生日を祝う方法はある。桜井くんのように──結局渡さなかったけど──お菓子を買うとか。


「……でも蛍さんって甘いものも嫌いでしたよね」

「そうだけど。んな話したっけ、俺」


 ……桜井くんにしても蛍さんにしても、男子というのは自分が口にしたことを覚えていないのだろうか。


「勉強会で蛍さんの元カノさんと別れた理由話してる時に口の中が甘ったるくなるものは好きじゃないって仰ってたじゃないですか」

「お前よく覚えてんな」

「三国ちゃん、さてはそういうこと例の普通科の笹部にやってた?」


 そういうこと……とは? 首をひねっていると「笹部くんが話したことよく覚えてあげてたんじゃない? 三国ちゃんが興味ないスポーツの話とか」と能勢さんに横から補足された。


「そういうことなら……そうかもしれません」


 そういえば私は必死に会話を繋げたという事実が、傍からは話が合っているように見えた、みたいな話があった……。意図を理解して頷いていると「ほーらね。三国ちゃんだめだよ、そういうことしちゃ」と九十三先輩はしたり顔だ。というか、〝例の普通科の笹部〟呼ばわりするなんて、九十三先輩の中で笹部くんはどんな立ち位置なんだ。


「そういうことするとね、男は馬鹿だから勘違いするわけ。あれッもしかして三国って俺のこと好きなのかな!? ってね」

「私はそんな馬鹿みたいに単純な認識はしません」

「だから男はそうだつってんの!」


 ……だって桜井くんが私の家の鍵に限って忘れずにちゃんと持ってきてくれたって、それは桜井くんが私を好きだという意味にはならないのだから。


「……でも仲が良くない人のことはそうやって覚えてる話で繋げないと会話が続かなくないですか? それを会話を繋げたからって好きだとかどうだとか……」

「え、仲良くないヤツと話なんて続けなくてよくね? 続けてんだから好きなんだろって思うだろ」


 ……目から鱗が落ちた。話が続かなくて三国はやっぱり頭のおかしいヤツなんだのなんだの思われるのは嫌だ、なんて思って一生懸命続けてたけど、それは私の自尊心の問題だった……?

「もしかして……私は尊大で傲慢だったのかもしれないです……反省しました」

「ソンダイってなに」

「今の話の流れで何反省すんだよ」

「笹部くんを引っ掛けちゃったことでしょ」

「話は戻りますけど、蛍さんは甘いもの嫌いなら……なになら食べるんでしょう、アイスとか?」

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