誓約付き!?期間限定の同居生活~不仲なはずの狼系ドクターは、義妹を寵愛する
- 雄基君との約束の日 ―

日曜日、15時前に病棟ラウンジで待っていると、雄基君が笑顔で椅子に座った。
「雄基君、体調は大丈夫?」
「うん、今日は楽しみにしてたから」
検査と不安で少し元気が無さそうだけど・・・

「じゃあ、片方ずつイヤホンをつけてっと・・・いくよっ」
一呼吸したあと、『ジングルベル』を弾き始めた。

「あっ!」「ちがっ!」と、沢山間違えていると、クスッと笑う雄基君は、
「大丈夫だよ、落ち着いて楽しんで」
笑顔で私の曲に合わせて、歌を口ずさみながら、手でリズムを取っていた。

落ち着いて・・・先生に教えてもらった時の風景を思い出しながら、弾き始めると、楽しくなって、それからは間違うこと無く、弾ききった。

「ごめんね、左手はやっぱり上手く出来なくて。少し簡単にしたのに、たくさん間違えちゃった」
「凄いよ、この数日で弾けるなんて」
「雄基君が慰めてくれて、楽しんでくれたから弾けたんだよ」

雄基君は私から目を逸らし、ロールピアノを見つめていた。
「思い出したよ、ピアノを始めた頃・・・外で走り回れ無くて、お母さんがピアノを教えてくれて・・・いつも優しく見守ってくれていたんだ」
「楽しかった?」
「うん、でも、いつの間にか、旨く弾かないとって、楽しくなくなってきて・・・今日の藤里さんを見て、僕はピアノが好きなことも、楽しさも思い出せた。ありがとう」
「良かった・・・元気になったら、聞かせてね、雄基君のピアノ。あっ!あと、一緒にプリン食べようね!駅前の美味しいプリンは、雄基君と食べるまで我慢するから!」
「ははっ!ほんと、天真先生の言う通りだね」
「やだっ!天真先生、私の悪口言ってたでしょ?」
「気になる?もしかして・・・天真先生のこと、好きとか?カッコいいもんね」
「だ、誰があんな人・・・」
「不安な僕のこと、自分のことのように考えてくれているんだ。それが凄く伝わる。本当に優しい人なんだなぁって。天真先生と藤里さんのお陰で、楽になった。手術、頑張るよ」
「うん・・・うん・・・」
私は、雄基君が抱えて来た、計り知れない苦しみに胸が一杯になった。
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