推しにおされて、すすむ恋

「なんか、恥ずかしいね」
「皆が騒がしくて良かった」


「へへ」と二人で笑う空間が、幸せすぎて。
私たちは、しばらく見つめ合っていた。

そこへやって来たのは、大きな足音!二人分!


「おい、どけどけ!あれ拾わねーとヤバいからな!」
「何が飛ばされたの?」


私たちの横を通り過ぎるヤタカさんとリムチ―に、玲くんが尋ねる。すると返って来たのは、とんでもない答え。


「さっき三人でイタズラに描いた似顔絵だよ!名前もバッチリ入ってるから、見られるとヤバい!」
「なんであんなの描いたのよー!」
「ステラが〝これも卒業動画に載せよーよ〟って言ったんだろうが!パソコンに読み込んだ後、顔はスタンプで隠せばいいじゃん、って!」


右往左往する皆を見ながら、私と玲くんは見つめ合う。そして同時に、プッと吹き出した。


「おい、お前ら!笑ってるけど、全員分のイラストと名前が載ってるんだからな!特に、ステラ妹!お前に至っては本名だからな!」
「え!」
「……」


ヤタカさんの声を聞いた途端、玲くんの顔つきが変わった。ヒラヒラ舞う紙を、静かに見つめている。
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