神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
…そのまま、小1時間ほどが過ぎた頃。

誰かが、俺の部屋の扉をノックした。

そして、ドアの向こうから呼びかける声がした。

「おーい、ジュリスー。いるかー?」

何者かのノックと声で、俺は微睡みから目を覚ました。

あれ…。いつの間にか、俺も眠ってしまっていたのか…。

「ん〜…。ねむ…」

あくびをしながら、俺は両手をついて上体を起こした。

そして、自分の横に眠っている人物に気づいた。

…。

…は?

「ジュリスー?いるんだろ?」

「開けてみます?」

「そうだな」

ドアの向こうから、キュレムとルイーシュの声がした。

俺は焦った。そりゃもう、めちゃくちゃ焦った。

寝起きの身体に、冷や汗がどっと溢れ出した。

「ちょっ、まっ…!開けな、」

「おっ、ジュリスいるんじゃないか。これ、昨日の会議のぎじろ、」

「…うわぁ…」

扉を開けて、中に入ってきてしまったキュレムとルイーシュは、その場に固まった。

二人が見つめる先は、当然。

…俺の横で、全裸の身体に毛布一枚だけをかけて眠っている、ベリクリーデ(大人)であった。

…マジで?

…俺、まだ夢の中にいるんじゃないよな?

頼むから、これは夢であってくれ。

この五日間、俺は毎日のように、早くベリクリーデが元の姿に戻らないだろうか、と願っていた。

だが。

…だが、「今」戻れとは言ってない。

しかも…こんな、絶妙過ぎるタイミングで。

「おまっ…お、おま…!な、なんてことを…」

全裸のベリクリーデと、その横に添い寝していた俺を交互に見つめ、キュレムが喘ぐように言った。

「ちょっと待てキュレム。ちょっと待て!これはごかい、」

「誤解もへったくれもあるかぁ!」

「いった!」

キュレムは、手に持っていた議事録の冊子を、俺に向かってぶん投げていた。

側頭部に直撃。さすがのコントロール。

って、言ってる場合かよ。

「てめぇら!昼間っからヤッてんじゃねぇぞ!」

「やっ…!な、何もやってねぇっての!」

「嘘つけコラ!明らかに今、賢者タイムだったろうが!」

はぁっ!?

「きっと、五日間に渡る幼児プレイに目覚めて、二人共、本物の幼児が欲しくなったんですよ」

挙げ句ルイーシュが、そんな超つまんねぇことを言い出した。

「で、昼間から『製作』してたんでしょうよ。いやぁ大層なご身分で」

「…何も製作してねーし。それはお前らの妄想だ」

「うるせぇ。処女と童貞は誰よりもエロい妄想をするもんだ。舐めんな!」

舐めてねーよ。

あと、そういうことは自慢げに言うことじゃないから。

「だからっ…!これは、本当に…」

「むにゃむにゃ…。あれ?ジュリス?」

この、最悪のタイミングで。

図ったかのように、ベリクリーデが目を覚ました。
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