空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 大丈夫。私の好きだった、穏やかな海を思い出すんだ。

 脳裏に、幼い頃に見たあの海を思い浮かべながら、今日も着けてきた母のペンダントを握り締める。深呼吸していると、凌守さんが口を開いた。

「大丈夫です。ゆっくり、足をかけてみてください」

 凌守さんは片足を船にかけ、反対の足は桟橋につけたまま、右側から私の身体を支えるように立ってくれている。

「はい」

 そう答えたけれど、乗るんだ、乗らなくてはと思えば思うほど、気持ちが焦る。同時に、船と陸の間に見える波の揺れが、どうしても私を怯ませる。

 怖い。
 だけど、怖がっていてはダメだ。勇気を出せ。

 私はもう一度深呼吸をし、右足を陸から離す。
 その時、船が一度大きく傾き、凌守さんが態勢を崩した。漁港に大きな波が押し寄せたらしい。
 私は上げた右足を陸に戻し、思わずそのまま後ずさる。
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