空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「すみません、俺がバランスを崩してしまったから」
「いえ、大丈夫です」

 口ではそう答えたけれど、心臓がバクバクと鳴っている。私はペンダントを握り締め、必死に口で呼吸した。

「海花ちゃん……」

 幸華さんの声がして漁船の中を見ると、心配そうな顔をする東海林夫婦と目が合った。

 大丈夫、私ならできる。凌守さんが、隣にいてくれるんだから。
 そう思うけれど、早まる心臓が私に足を踏み出させてはくれない。

 乗れ、乗るんだ。
 何度も言い聞かせるのに、足は竦んだままで動かない。

 そうこうしているうちに、脳の奥に突然麗波が現れた。与流さんの腕にべったり張り付いた彼女が、意地悪く笑う。

『落ちちゃえばいいのに。あんたなんか、生きてたって無駄。〝海の悪魔〟の娘なんだから』
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