空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「ごめんなさい」

 乗れなかった。悔しいし、ここまでしてくれた凌守さんにも東海林夫婦にも申し訳ない。
 だけど、彼の手の温もりに安心し、再び涙が溢れてしまう。

「謝る必要はないですよ。あなたは、十分に頑張った」

 凌守さんはそう言うと、肩に乗せたのと反対の手を、私の背に優しく添えてくれる。
 まるで抱きしめられているような体勢。それで余計に安堵し、涙が止まらなくなる。

「でも、乗れませんでした」
「『でも』はいりません。頑張った自分を、褒めてあげましょうよ。あなたは船に乗ろうと、足を踏み出した。それだけで、大きな一歩じゃないですか」

 凌守さんの言葉に、救われる。私は、少しは成長できているのだろうか。
< 111 / 210 >

この作品をシェア

pagetop