空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「そうだよ、海花ちゃん。俺たち、海花ちゃんがこの間市場に来てくれたのだって、本当に驚いたんだから。海に、来られるようになったんだって」
「そうよ。むしろ、私たちが少し、無理を強いちゃったわね」

 東海林さんと幸華さんがそう言う。すぐ近くから声が聞こえたから、きっと船を下りてここまで来てくれたのだろう。

 そっと凌守さんの胸から顔を上げ、目元を袖口で拭った。泣いてばかりで何もできない私に、優しく三人が微笑んでくれていた。

「ごめんなさい、本当に。せっかく用意していただいたのに、申し訳ないです」

 ぺこりと頭を下げる。だけど、だれも私を責めなかった。

「気が向いたら、また乗りに来てちょうだいね」
「ちょっとした周遊くらいなら、いつでも出してやるから」

 そう言う東海林夫婦に見送られ、私は凌守さんと漁港を後にした。
< 112 / 210 >

この作品をシェア

pagetop