空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 凌守さんとマルマロスビーチを歩き、その先の遊歩道にやってきた。
 平日の今日は、公園内に家族連れの姿は少ない。私たちはゆっくりと、マルマロスロ―ドを歩いた。

 小さな船が幾つか、海に浮かんでいる。それを見てしまうと、私は乗れなかったのだと後悔が胸を襲う。

「少し、座りましょうか」

 道沿いのベンチを指差し、凌守さんが言う。

「はい」

 うつむきながら頷くと、凌守さんは優しく私の右手を引っ張って、ベンチまで誘導してくれた。

 ベンチに二人で並んで腰かける。私はすぐ、彼に頭を下げた。

「先ほどは、本当にすみませんでした」
「だから、謝らないでくださいって」

 凌守さんは優しく言う。だけど、申し訳なさは消えるどころか、膨らんでしまった。
< 113 / 210 >

この作品をシェア

pagetop