空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 彼の声は低く、沸き上がる怒り感じた。
 使命感からくるだろう彼のその言葉は、彼女のした行為を真っ向から否定し、私を助けようとしてくれる。

 だけど同時に、私は父のことを思い出し、複雑な気持ちになった。麗波に向ける怒りと同じように、彼の怒りは父にも向いている気がしたのだ。
 そして、その娘である私だって同じこと。私は、卑劣な海の犯罪を犯した、機関士の娘なのだ。

「海は怖いところだ。広くて、いろんなものを奪っていく。その海でひとり、落とされたペンダントを追った彼女の気持ちが、あなたにわかりますか?」

 丁寧な言葉遣い、諭すようなゆっくりとした口調。それは逆に、彼の怒りを強調させているようだ。

 麗波は余裕が無くなったのか、苦虫をかみつぶしたような顔をした。それから眉間に皺を寄せ、眉を吊り上げる。

「わからないわよ、そんなこと。分かりたくもないわ。貧乏人のくせに、お父様がいなかったら今頃どうなっていたかも分からない人間のくせに!」

 麗波の声は小さかったが、徐々にヒートアップしていく。きっと睨まれ、思わずひっと体を縮こませた。
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