空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「いい気になってんじゃないわよ! せっかく奪ってやったのに、海辺に送ってやったのに。なんであんたは新しい恋人に守られてんのよ!」

 彼女からの罵倒に、頭を踏みつけられたあの日々を思い出してしまう。
 恐怖で体が強張り、震え出す。そんな私の腰を、凌守さんはぐっと抱き寄せ、守ってくれていた。

「奪った? 送ってやった? お前は彼女がこの場所で、どんな気持ちで毎日を過ごしているのか、想像もできないんだな」

 凌守さんの声に、麗波が余計に目を吊り上げる。私は反射的に、凌守さんの服の袖を引っ張った。
 彼を止めなくては。麗波を敵に回したら、彼まで何をされるか分からない。

 しばらく凌守さんと麗波は睨み合っていたが、与流さんが戻ってくると途端に麗波は目の色を変えた。

「与流さぁん」

 彼女はそう言うと、ベタベタと与流さんの腕にまとわりつく。

「〝海の悪魔〟の娘のくせに。あんたが幸せになるなんて、絶対に許さないから」

 そう言い捨てて、麗波は私たちの前から去って行った。
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