空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 凌守は誰に指示されるでなく格納庫へ向かい、ドライスーツに着替えると、鞄から海花のペンダントを取り出した。

 一人きり、苦しみ続けていた彼女を守っていた希望のペンダント。それを、彼女は自分に託してくれた。
 必ず全員を救いだし、これを彼女の元に返さなければ。

『これ、お守りです』

 そう言った海花の顔を思い浮かべ、使命を全うするのだと、右肩にあるチャック付きのポケットに〝お守り〟を仕舞った。

 すると、凌守の上司がやってきた。

「先発の一コ隊は傷病者等を優先し、既に到着済の巡視艇への誘導が完了しつつある。だが、傷病人や不安がる人が多く、現場の混乱を収めるために隊員がその場を離れられくなっている」
「承知しました。俺は取り残された人々の救出ですね」

 硬い顔で伝えられ、凌守はボンベを背負いながら答える。
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