空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 事態は深刻だった。
 二階に上がったが、立っていても腰辺りまで水に浸ってしまうのだ。
 凌守はデッキに出ると、通信機で全員の様態を伝え、〝みみずく〟からの応答を待った。

 やがて〝みみずく〟から機動救難士がホイスト降下で降りてくる。これは吊り上げ救助装置のワイヤーロープで降りてくる降下法で、救助者を繋いで引き上げることができる。
 ホバリングの風が吹き付ける。三人は緊迫した状況であることを悟ったのか、何も言わなくなっていた。
 隊員が到着すると、年長者である御船伊から引き上げてもらう。

「次はお前だ」

 御船伊がヘリコプターに収容されたのが見えると、凌守は麗波にそう言った。
 麗波はそっぽを向いているが、唇を青く震わせている。

「もう少しだからな」
「分かってるわよ!」

 強気な声は震えている。だけど、凌守はその言葉に彼女の生きる力を感じ取った。
 大丈夫だ、彼女は死なない。
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