空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
「あなたが生きていて、よかった」

 色々な想いが胸に溢れ、複雑な気持ちになるけれど、これだけは確かに思う。麗波が、海で死ななくてよかった。

 私の言葉に、麗波は悔しそうに下唇を噛む。だけどすぐ視線を海に向け、自嘲するように笑った。

「御船伊の船は、事故に遭うと記録媒体が消滅するように設計されてるらしいわ。それでもバレてるんだから、本当バカみたい。あんたの彼氏も、私を助けるなんて本当バカな男ね。……でも、いい男だった」

 彼女の語尾に違和感を覚えた。なぜ、過去形なのだろうか。

「凌守さんは⁉」

 思わず聞いてしまう。すると麗波は海を見つめたまま、口を開いた。

「彼は与流さんと一緒に、爆発に巻き込まれたわ」

 麗波のその小さな声を聞き取った瞬間、頭から血の気が引いた。ドクリと胸が大きく鳴り、咄嗟に嘘だと思った。
 だけどその瞬間、私の脳裏に先程聞いた爆発の音が響いた。

 最悪の想像をしてしまい、私も海を見た。海面に、炎が揺らめいている。凌守さんは、まだあそこに――。 

 居ても立ってもいられなくなり、私は駆け出した。
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