空飛ぶ海上保安官は、海が苦手な彼女を優しい愛で包み込む
 エレベーターは警察が乗っていってしまったから、しばらく来ない。私は手摺を頼りに、階段を駆け下りた。
 十五階、十階、五階――。やがて一階に着くと、そこにいるメディアのフラッシュも気にせず一目散にマルマロスロードへと走った。

 乗客乗員が避難してきただろう巡視艇の止まっている桟橋を、海に向かって走る。その先端で、やっと足が止まった。

 炎に包まれた遊覧船が、沖の方で沈没してゆく。あそこには、まだ、凌守さんがいるのに。

「嘘……。私、まだ……」

 言いながら、涙がほろほろとあふれた。拳をぎゅっと握りしめる。

「まだ、好きって伝えてない! 帰ってきてくださいよ! ペンダント、返してくれるって約束したじゃないですか、凌守さん!」

 真っ黒に光る海に向かって、思いっきり叫ぶ。しかしもちろん、返答など来ない。

 へなへなと膝から崩れ落ち、その場にへたりこんだ。
 彼は、海で、散った。
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