桐田家のヒミツゴト(旧:合法浮気)
本当にいいのかな?既婚者とか死別とかなのだろうか。なんて、疑問は残るものの。智夜さんが眉を下げて切なそうに笑うから、それ以上何も言えなかった。
それからはトントン拍子で事が進んでいった。
家族には県外で仕事が決まったと伝えた。
家を出る事が決まると、気持ちもとても楽になった。
お互いにバツイチということもあり、彼の両親への挨拶スムーズに進んでいった。
智夜さんの父親が経営するホテルは客室が30室と大きなものとはいえないけれど、十分な程大きく立派な建物だった。異国の地を想像させられるヨーロッパ風で何より外観がとても可愛らしいものだった。
そこに併設されたキャンプ場は新しいだけあり、ログハウス調の受付、整備されたサイトは素人の私の目にも魅力的にうつる。
何より、湖の近くに位置してて、緑、緑、緑と周りを見渡しても自然で溢れていた。
私と智夜さんの式はホテルの近くの小さなチャペルで家族だけで行った。
籍だけでいいと言ったのだけど、両親達の希望で行う事になったのだ。
「お互いのために、約束ごとを確認しておきたいんだけど」
「はい」
「俺は親の干渉から逃れるため、彩里ちゃんは両親からこの土地から離れるためこの結婚話を進めるという事でいいよね?」
智夜さんの言葉に大きく頷いた。
「同居とまではいかないけど、俺の家族と同じ敷地内に住むことになる。子供の事や跡取りの話をされるかもしれないけど……」
私の方をちらりと見て、智夜さんが言いにくそうに言葉を続けていく。
「そこは俺と茉昼でしっかりと守るから」
「ありがとうございます」
「それと、お互いに恋愛感情は持たない」
「大丈夫です」
「じゃぁ、お互い恋愛感情は無しということで。夜の営みは無しだから安心して」
「よ、夜の営み??」
「ははっ、声が大きいよ。彩里ちゃん面白いね。じゃぁ、行こうか」
黒いタキシード姿の智夜さんが私に手を差し伸べる。
私は茉昼さんと選んだ純白のウェディングドレスを身に纏って、彼の手に自身の右手を預けた。