桐田家のヒミツゴト(旧:合法浮気)
02.同居生活スタート
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「彩里ちゃん、ゆっくり休めた?」
「あ、はい」
昨日、無事に式が終わった。
お互い2度目ということもあり、お互いの家族だけの挙式のみだったし。形だけの夫婦という事もあり、新婚旅行へは行かないこことにしたし。
契約結婚が決まってから約1ヶ月。全てがハイペースで進んでいった。
旅行については、両親には智夜さんの仕事の都合と伝えたのだけど、実質、シーズン的に休みが取れないらしく丁度良い理由にもなった。
「はい、どうぞ」
「すごい……甘くて良いにおい。え、これ智夜さんが?」
珈琲と甘い蜂蜜がたっぷりかかったフレンチトーストの乗ったお皿が、テーブルの上にカタンと置かれる。
「はは、一品でごめんね。一緒に食べようか」
「いっいえ!全然っ、美味しそうです!」
「キッチン、彩里ちゃんも自由に使っていいからね。俺も気が向いた時しか作んないし。ま、気軽にシェアハウスしてる同居人だと思って」
「は、はい!」
智夜さんが落ち着いた声のトーンを出して、穏やかに目を細めるから。私よりとても大人に見えるから、驚いて少し慌ててしまった。
恋愛感情はお互い無いとはいえ、私、本当に結婚しちゃったんだ。自身の左手に視線を向けるとシンプルな結婚指輪が目に入る。
6人は座れるであろう木目調のリビングテーブルに、向か合って座る。「いただきます」と2人で手を合わせた時──、
「────…もちゃー!!ともちゃーー!!!」
子供の大きな声が耳に入ったと同時に扉が勢いよく開かれた。