桐田家のヒミツゴト(旧:合法浮気)
「ともちゃー、はよー!」
「柊!?」
バタバタと部屋に入ってきたのは、茉昼さんの息子の柊くんだった。
まだパジャマ姿をしたこの子が、靴も脱がずにそのまま背もたれのある椅子によじ登り出すからぎょっとした。
信じられない…フローリング泥で汚れてるし。
「いーにおーぃ!!おいしいねー!」
(※まだ食べてはいない)
「柊も食べる?」
「たべうーー!」
智夜さんが自分のお皿を柊くんの前に置いて立ち上がり、オープンキッチンの方へ歩いて行く。そして、落としても割れないプラスチックのコップに牛乳を入れたものを柊くんに渡して。「先、食べてていいからね」と、もう1つフレンチトーストを焼きだした。
私のすぐ隣に座る柊くんが、手掴みでパンケーキをパクリと食べだしてにっこりと顔をむけてくる。
「きゃー、おいしいねー」
目をキラキラとさせて笑顔なんだけど、私は苦笑いを隠せない。
その時、再び扉が開いて家に入ってきたのは、妹の茉昼さんだった。
「柊、やっぱりここにいた!あー、もう靴も脱がないで……お兄ちゃん、彩里さんごめーん」
「いーよ、どうせついでだし。ね、彩里ちゃん」
「あ、……はい」
両手を合わせて謝る茉昼さんに、智夜さんが穏やかな笑顔で応じるから。私は肯定の返事をするしかない。
「もー柊ったら。ちゃんと靴脱いで!手は洗ったの?」
茉昼さんが慣れた手付きで柊くんの靴を脱がせ、ウェットティッシュで手を拭く。
結婚後はじめての朝食は、私と智夜さん、茉昼さん、柊くんの4人。とても賑やかな食卓となった。