(マンガシナリオ)九条先生の恋愛授業
10話
○学校・2年2組の教室(放課後)
蓮「手塚さん、また明日ね。」
くるみ「うん、また明日。部活、頑張ってね。」
くるみ(高柳くん……あのデートの後も今までと変わらない接し方をしてくれる。)
那月・遥「くるみ、バイバーイ!」
くるみ「あ、またね!」
くるみ(よし行こう。)
自分の学生鞄を肩にかけて、小走りで5組の教室へ向かうくるみ。そうして、5組の教室の入口で早苗とバッタリ出会う。
早苗「あっ……。」
幾分、気まずそうに視線を逸らす早苗。一瞬、くるみの頬を見る様子が窺える。
くるみ「話があるんだけど。」
早苗「……。」
くるみが歩き出すと、早苗は何も言わずに付いてくる。昨日の朝と同じように体育館の裏までやって来るくるみと早苗。
人気がない場所まで来て、足を止めて、早苗の方に振り返るくるみ。
早苗「……まさか自分がぶった斬った相手に逆に呼び出されることは今までなかったわ。」
少しでも自分の立場を崩したくない早苗は、あくまでも上からの目線で笑って見せる。
早苗「それで、話って何?私、部活もあるから忙しいんだけど。」
くるみ「……高柳くんのことをアイドルみたいに扱うのはやめたら。」
早苗に負けないぐらいの強い視線を送るくるみ。
早苗「な、なによ、急に!あんたが私のすることに口出しする権利あるわけ!?」
くるみ「ないよ。でも、高柳くんは高柳くんだよ。」
蓮が周りから特別扱いされていることに対して、寂しそうに笑っていた姿を思い浮かべるくるみ。
くるみ「高柳くんだって普通に恋愛したいけど、そうやってみんなが崇めるからそれすら難しいと思っている。」
くるみの言葉に何かに気付かされたような顔をする早苗。自分がしてきたことは、余計に蓮のことを苦しめていたということに。
早苗「それで、特別扱いしない私が蓮の彼女になるって言いたいわけ?」
くるみ「ううん。だって、鏑木さんの高柳くんへの好きは私とは違うから。私に彼女になる資格はない。」
早苗「どういうこと?」
くるみ「私も高柳くんのことをアイドルみたいにかっこいい、だから好きって思っていた。って言うか、大好きな漫画のキャラクターに似ていたの。だからそんな人が二次元にいるって思って好きだと思ったのかも。」
くるみ(そう、こんなに素敵な身形の人はいないって。)
くるみ「今は高柳くんが中身もすごく素敵な人だと思っている。それを知っても私の好きが最初に感じたかっこいいを超えることはなかった。」
早苗「……。」
くるみ「色々な人に言われて気付いたの。本当に好きってそう言うものじゃないって。」
くるみに反発しようとはしない早苗。代わりにくるみの頬に自分の手を当てた。
早苗「……ごめん。」
早苗に微笑むくるみ。
早苗「私、正々堂々と戦ってみるわ。」
くるみ「うん。」
踵を返して立ち去る早苗。途中で足を止めて、もう一度振り返る。
早苗「蓮が似ている漫画って君にゾッコンラブでしょ?」
くるみ「えっ……そう、それ!」
早苗「私も好きよ、あの漫画。」
お互いに顔を見合わせて笑い合うくるみと早苗。
○くるみの家・自室(夜)
お風呂上がりでルームウェア姿のくるみ。スマホを手にして自室のデスクに座っている。
くるみ(ライチ)「明日の放課後、話したいことがあるの。どこかで会えないかな?」
意を決して送信するくるみ。すぐに返信の着信が鳴る。
蓮(ライチ)「分かった。4階の理科室の前は?あそこなら放課後は人通りがないから。」
くるみ(ライチ)「じゃあホームルームが終わったらそこに行くね。」
ふうっと息を吐くくるみ。
くるみ(高柳くんを傷付けるかもしれない……でも……)
○学校・理科室前の廊下(放課後)
向かい合って立つくるみと蓮。周りには誰もいない。グラウンドで練習をしている野球部の声が微かに聞こえてくるぐらいだ。
くるみ「部活があるのにごめんね。」
蓮「いいんだ。俺が手塚さんの話を聞きたいと思ったから。」
くるみ(高柳くん……こんな時でも優しいんだね、すごく。)
くるみ「……私、九条先生との関係を自分から切ることができない。九条先生は私が高柳くんに数学を教えてもらうことを良かったなって言ったけど、それが辛くて……私が先生から離れられないんだって分かったの。ごめんなさい。」
頭を下げて謝るくるみ。蓮は穏やかに笑い、「頭を上げて。」と、くるみに言う。
蓮「なんとなくそうなると思ってたんだ。」
くるみ「高柳くん……。」
蓮「俺ね、実は失恋したの初めてなんだ。なんなら、女の子をデートに誘ったのも手塚さんが初めて。」
くるみ「嘘!?信じられない。だって、高柳くん、デートの時、すごくスマートでカッコよかったもん。」
蓮「ははっ、それはね、けっこう頑張ってた。手塚さんもすごく自然体でデート慣れしてる感じがあったよ。」
くるみ「本当?私もね、すごく頑張ってたんだよ。」
お互いに顔を見合わせて吹き出すくるみと蓮。
蓮「今までずっと高柳蓮は別枠みたいな扱いを受けてきたから、俺はその枠を壊してはいけないと思っていた。だから、告白したりデートしたり、そういうことをして、騒ぎを起こしてはいけないんじゃないかなって。自分でそのつもりはなくても、勝手に周りが騒ぎにしちゃうから。」
くるみ「……もしかして、私とのデートも?」
蓮「颯斗にだけ話したんだけどさ、近くでこっそり聞いてたやつがいて、そいつが他の部員に話して大騒ぎ。」
くるみ(それで鏑木さんも知ってたんだ。)
蓮「本当はもうそう言うの嫌なんだけどね。」
寂しそうに言葉を溢す蓮。そんな蓮の手をがしっとつかむくるみ。
くるみ「高柳くん!大丈夫だよ!!」
蓮「えっ?」
くるみ「高柳くんを一番近くでずっと見てきた人が、高柳くんを変えてくれるよ。」
蓮「俺を一番近くでずっと見てきた人?」
くるみ「うん。だから、高柳くんは高柳くんでいいんだよ。枠を壊したっていい。」
蓮「……。」
くるみ「ごめん、なんか偉そうなこと言って。」
慌てて蓮の手を離すくるみ。
蓮「手塚さん」
くるみに右手を差し出す蓮。
蓮「……良かったら、これからも友だちとして仲良くしたいんだけど。コロコロわんわん同盟も継続で。」
くるみと蓮の顔には笑顔が浮かんでいる。
くるみ「もちろん。こんな私で良ければ。」
自分も手を差し出し、蓮と握手をするくるみ。
3階のフロアまで一緒に階段を降りるくるみと蓮。
くるみ「これから部活?」
蓮「うん。手塚さんは、今日、会いに行きなよ。」
くるみ「えっ?」
蓮「九条先生。」
くるみ「……。」
蓮「思っていることは早めに伝えた方がいいよ。」
くるみ「高柳くん……ありがとう……。」
蓮と手を振り、そのまま数学準備室に向かうくるみ。数学準備室の前まで来て、ノックをする。
九条「はーい。」
緩い返事をしてから、ドアを開けてくれる。
くるみ「……。」
九条「どうぞ。話があるんでしょ?」
九条に誘われて中に入るくるみ。中には九条以外に誰もいない。
自分の席に戻ろうとする九条に後ろから抱きつくくるみ。
くるみ「私、先生が好きです。」
九条「それで?」
くるみ(うう……それでって……)
九条「話はそれだけ?」
くるみ「……先生が好きだと気付いた私を側に置いてくれませんか。今までみたいに一緒に過ごしたいです。」
九条「断る。」
くるみ(先生……なんだかすごく冷たい……でも……ここで引き下がりたくない……)
くるみ「せ、先生が私のことを嫌いではないと思っています。」
抱きつくくるみの腕を解いて、くるみの方を向く九条。その顔からは感情は一切読めない。
九条「嫌いではないが、好きと言う気持ちに答える必要はないだろう。」
くるみ(……言い返す言葉が見つからない。こんな人、私みたいな女子高生じゃ太刀打ちできないよ。)
九条「分かったなら、諦めろ。」
くるみ「嫌です!」
九条「おいっ!」
くるみ「絶対に嫌。」
くるみ(なにか……名案……そうだ!)
くるみ「先生!私に恋愛と言うものを教えてください。」
九条「はあ!?」
くるみ「好きとはなんなのか、彼氏彼女とはなんなのか、そう言うことを何も知らない私に授業してください。先生が教えてくれたら、高校を卒業する時には、自分に自信が持てない私も変われると思うんです。」
九条「そんなの他のやつに頼め!俺の仕事は数学を教えることだ。」
くるみ(九条先生が好きだから言ってるのに……あれ?でもこのやりとりって初めての時も……)
くるみ「先生が断るなら今度の期末テストで0点をとりますよ。いいんですか?」
九条「相変わらず教師を脅すとはいい度胸だな。でも、同じ手には二度ものらない。」
くるみ「むう……いいですよ!じゃあ次の期末もその次の中間も0点取り続けるんだから。」
九条(こいつ、本当にやりかねないからな……でも……彼女を側に置いたら何かが変わってしまうから……)
九条「分かった。じゃあ、こうしよう。手塚が今度の期末テストの数学で90点以上取れば、恋愛について教えてやる。」
くるみ「90点以上!?それって1問か2問しか間違えられないんですよ!!」
九条「そうだな。」
くるみ「無理です!!絶対に無理!!」
九条「じゃあ、諦めろ。俺はこれ以上負けられない。」
くるみ(こんなことで諦めてたまるもんですか!!)
くるみ「いいですよ、取りますよ!90点以上!!その代わり、取ったら絶対に約束は守ってもらいます!」
小指を差し出すくるみ。その指を懐かしそうな顔をして見つめる九条。
九条「また指切りするの?」
くるみ「はい。嘘ついたら針千本です。」
くるみに気付かれないように笑みを漏らして、くるみの小指に自分の小指を絡ませる九条。
○くるみの家・くるみの自室(23時)
くるに「うー!!明日が本番だなんて。」
自分の机に頬をのせるくるみ。机の上にはたくさんの数式が書かれたノートが置いてある。
くるみ「やってもやっても90点以上とれる自信がないよ。」
テスト範囲の問題をもう何十回も解いているくるみ。解答に必要な公式も全て覚えた。
くるみ「課題範囲はもう間違えることはないけど、実際のテストは数字や問題の表現の仕方が違うんだよね。」
くるみ(九条先生がテスト範囲のまま出すなんてこと絶対しない。)
マグカップに入った紅茶を飲み干すくるみ。
くるみ「あと1時間は頑張る。」
くるみ(だって、後悔したくない。90点以上取らなきゃ、私はただの一生徒に戻ってしまう。)
○学校・2年2組の教室(3時間目 数学のテスト)
教室に出席番号順に座席に着く2年2組の生徒たち。机には裏返された数学のテストがある。
持田「はい、始め。」
チャイムが鳴ると同時に合図をする持田。一瞬、くるみと目が合い、周りに気付かれないぐらい細やかに笑みを漏らす。
くるみ(ちょっと緊張がほぐれたかも。)
数学のテストを表に向けて名前を書くくるみ。
くるみ(あれ?)
迷うことなく解答を書いていく。
くるみ(分かる……数字や表現の仕方は明らかに違うのに……それでもいつもより、ううん、いつもと比べものにならないくらい解ける。)
周りの問題を解くシャープペンシルの音や消しゴムを消す時になるくしゃっと言った音も気にならないくるみ。全神経を集中させて問題を解いていく。
持田「はい、そこまで。」
ふっと顔を上げると同時にすぐにチャイムが鳴る。
くるみ(正解かどうかは分からないけど、最後まで悩まず解けちゃった。)
くるみの前の座席に座っていた蓮が振り返る。
蓮「どうだった?」
くるみ「いつもより手応えありだよ!」
蓮「そっか。九条先生のお陰かもね。」
優しく笑いかけてくれる蓮の表情は、友だちとして応援していることを現していた。
○学校・数学準備室(放課後)
自分のデスクで今日の数学のテストを採点する九条。73点、80点と生徒のテストの向かって右上に点数を書いていく。
九条「高柳は95点か。あいつ、本当に理系教科に強いな。」
一枚捲るとくるみの答案が出てくる。一瞬、手の動きを止める九条。
九条(全部、埋めてるし。)
上から順番に丸をつけていく。途中で止まりチェックを入れるが、最後まで答案を採点し、そこで小さくため息をつく九条。
九条「本当に君はぶっとんでるよ。この間まで30点台取ってたくせに。」
くるみのテストの右上に92点の点数を付ける。
数学準備室から職員室へとやってくる九条。職員室の自身が受け持つ学年の席に近付くと、くるみの担任が近付いてくる。
担任「九条先生、ちょっといいですか?」
九条「どうしました?」
担任「うちのクラスの手塚のテスト、もう採点しました?」
九条「さっき、終わりましたよ。」
九条(なんだ、なんだ?)
担任「何点でした?」
九条「えっ?」
担任「いやね、手塚、いつも英語は点数がいいんですよ、僕が受け持っているリーディングとかいつも80点以上だし。でも、今回、65点しか取れなくて、どうしたものかと。」
九条(確かあいつ、英語は得意だったのに……)
担任「それどころか現代文は50点だし、日本史は45点だし、これではこの夏休み、成績不良の生徒に実施している補習に参加してもらわなくてはいけなくなってしまいそうで。それで、数学はどうだったのかと。」
九条「えっと……」
九条(あのバカ!!)
○学校・2年2組の教室(3日後・4時間目 数学)
九条「この間の期末スト返すぞー。」
ざわざわとする教室。自分の席で両手を胸の前でぎゅっと握るくるみ。
九条「……高柳」
蓮「はい。」
教壇までテストを取りに行く蓮。
九条「学年一位だ。さすがだな。」
蓮「本当ですか?やった。」
素直に喜ぶ蓮。
九条「次、手塚……」
くるみ「は、はいっ!」
小走りで九条の元までくるくるみ。黙ったままくるみにテストを渡す九条。
くるい(92点!?嘘!?本当に!?)
顔を輝かせて九条を見るくるみ。小さくため息をついてから、くるみのテストの上にもう一枚紙を載せる。
[放課後に数学準備室に来るように]
そう書かれたメモ用紙。それを手にして頷くくるみ。
○学校・数学準備室前(放課後)
緊張しながら数学準備室の部屋をノックするくるみ。
九条「どうぞ。」
恐る恐るドアを開けるくるみ。
いつもと変わらず自分のデスクに座っている九条。他には誰もいない。くるみは部屋のドアと鍵を閉めてから、九条の隣の席、持田の席の椅子に腰を下ろす。
くるみ(先生……なんて言ってくれるんだろう……)
期待と不安を滲ませながら九条を見つめるくるみ。パソコンで授業の計画を立てていた九条はその手を止めて、くるみの方を向く。
九条「手塚……」
くるみ「はい!」
九条「この大馬鹿者!!」
くるみ(えっ?)
くるみ「先生酷い!!第一声が大馬鹿者ってなんですか!?よく頑張ったなって言われたいって思ってたのに!!」
九条「お前、他の教科どうした?」
くるみ「……。」
九条「答えろ。こっちは全部、情報を持ってるんだぞ。得意の英語、リーディングは65点、現代文は50点、日本史に至っては45点って、数学以外全滅だろ!!」
くるみ「だって……」
頬を膨らませるくるみ。
くるみ「数学頑張るためには他を犠牲にするしかないじゃないですか!!」
九条「信じられん……」
額に手のひらを当ててため息をつく九条。そんな九条の姿に、九条に会うまで張っていた緊張の糸がついに切れてしまい、ぽたぽたと瞳から涙が落ちるくるみ。
くるみ「……このテストがダメだったら、私は一生徒に戻るから……絶対、嫌だった。先生ともう一緒にいられないなんて。」
ごしごしと掌で自分の目をこするくるみ。
くるみ「ごめんなさい。私の我儘にいっぱい付き合ってくださったのに。こんなところで泣く女なんてウザいですよね。先生は私を頑張らせるために提案したのを、私が間に受けただけですもんね。」
ガタリと席を立ち、九条に背を向けて部屋を飛び出そうとするくるみ。
九条「待てよ。」
そんなくるみの腕を掴んで引き寄せ、後ろからくるみを抱きしめる九条。
くるみ「……先生?」
九条「俺は約束は守る。君に数学をやらせるために、あんな約束を取り付けたわけじゃない。」
くるみ「……。」
九条「でも、これからはそれなりの覚悟がいること忘れんな。」
くるみ「……覚悟?」
くるみを抱きしめる九条の腕が強くなる。
九条「手塚が高柳のことが好きで、俺に相談に来ていた時と同じじゃない。君は今、一応、俺のことが好きで、俺は恋愛を教えるという提案を飲んだとは言え、彼氏のようにこれから君に接する。」
九条の額がくるみの後頭部にこつっと触れる。
九条「俺らの関係は隠さなきゃいけないんだよ。学校にいる彼氏彼女みたいなことができるわけもない。我慢させることもある。それでもいいのかってこと。」
九条の腕の中で頭を振るくるみ。
くるみ「そんな覚悟ならできています。私、生半可な気持ちで先生と一緒にいたいなんて思っていません。」
くるみの言葉に「分かった。」と九条は言い、くるみの腕を解いて、自分の方を向かせる。
九条「じゃあ、今日から連絡するのも解禁する。」
くるみ「本当に?ライチ、送ってもいいんですか?」
九条「いいよ。仕事に追われている時はすぐには返せないと思うけど。」
くるみ「そんなの全然いいです!うわー、嬉しい。」
頬に手を当てて、にまにまと笑うくるみ。
九条「そう言えば……」
くるみ「?」
九条「君、夏休みは補習決定だからね。夏休み前半の午前中、ほぼ毎日学校で勉強だから。」
くるみ「ええー!?なにかの間違いですよね!?」
九条「間違いなわけあるか!!数学以外はあんな散々な点を取っていて、補習が免れるわけないだろ!!」
くるみ「ううっ……最悪。私の夏休み……」
九条「……俺も学校来てるけど。」
くるみ「えっ?」
九条「君たちが夏休みだからって、別に俺たち教師は夏休みってわけじゃないから。俺も数学の補習の担当があるし、それ以外にも仕事はあるんだよ。」
くるみ「じゃ、じゃあ、補習に来たら毎日先生に会える?」
九条「多分ね。」
くるみ「むふふ……補習かー……夏休みにはいい制度があるもんだなあ。」
そんなくるみの頭をくしゃくしゃとなでる九条。
九条「全く。ちょっとは反省しろ。君の担任、具合でも悪いのだろうかって心配してたぞ。」
くるみ「つ、次のテストではきちんと挽回します。」
会話が途切れ、九条を見上げて見つめるくるみ。
くるみ「先生、これからよろしくお願いします。」
九条「……よろしくね……くるみ。」
くるみ(くるみ?今、先生、私のこと名前で……)
くるみ「きゃあー!!も、もう一回!!もう一回、くるみって呼んでください!!」
九条のネクタイを掴んで引っ張るくるみ。
九条「やめろ!!首が締まるわ!!」