トリックオアトリートな同期の日樫くんがあまくなる夜
「ちょっと酔い覚まししたいから、つきあってよ。ちゃんと送るからさ」
「いいけど……今の、大丈夫なの?」
「知らね。あっちももう大人なんだから大丈夫っしょ」
 彼はそう言ってどんどん歩いて行く。

「どこ行くの?」
「いいとこ」
 そう言って、彼は手を離してくれない。
 どうしてそんなことするの。女性とは手を繋いで歩くのが普通なの? そんなわけない……よね? それとも私が思うより酔ってるの?

 戸惑う私に気づくこともなく、彼は歩いて行く。
 到着した先にあるのはイルミネーションが綺麗なフォトスポットだった。

「今日までなんだって。ハロウィンイルミネーション」
「素敵! こんなのやってるなんて知らなかった」
 私は思わずスマホで撮影した。

 メインの笑うかぼちゃは私の背と同じくらいの大きさだった。周囲にはこうもりが飛び、白い化けが舞う。
 それらをさらに囲むのはきれいなイルミネーション。光が雫のように零れ、夜をきらきらと彩る。

 ふと周囲を見ると、カップルだらけでなんだか落ち着かなくなった。
 なぜか彼は私の手を握ったままだし、私たちもカップルに見えるのかな。
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