御曹司たちの溺愛レベル上昇中
──颯くんのおかげで、浮かない気持ちがいっときでも緩和されていくようだった。
「……飲み物、飲み物」
廊下に行く勇気も生まれ、苦みが欲しくなり自動販売機の前に立てば、後ろから控えめに肩を叩かれた。
「ん?……あ、どうしたの?」
球技大会で同じチームだった──坂本咲ちゃん。
球技大会以来、あまり話したことはなかったから珍しい……けど、颯くんのこと気になってるような話をしたことがあるから、今回の件があって声をかけてきたのかな。
「その……文化祭、お化け屋敷に決まったね」
「え?ああ、そうだね」
「午後に係決めるでしょ?……それで、良かったら一緒に衣装係やらないかなって」
モジモジしながらも、誘ってくれたみたい。
──別に颯くんのことを聞きたいとかじゃない?のかも。
「……わたしで、よければ」
「本当?良かった」
それでも、気になることは気になる。
「でも、どうしてわたしを?」
「この間……記事は見たけど、同じクラスでどんな子くらいかは一応分かるし……それに……家庭の事情でも一緒に小鳥遊くんと居るなら、好みとか……そのっ」
何があった、とか詳しいことを聞きたいのではなく、颯くんのことを聞きたいってことみたい。