御曹司たちの溺愛レベル上昇中

説明を求められ、切り出せないわたしを雪さんはそばにきて背中を擦ってくれる。


「小柳」

「颯、もっと優しく……」
「怒ってねぇよ。ただ、なんでこんな紙がお前の部屋にあるのか聞いてんだ」


これは……どう、頑張っても言い逃れは出来ない。


「……新聞のことがあってすぐ、休みだった土日のうちに……もらってきたの。……今のまま居たらよくないと思って」


腕の中にある冊子を強く抱きしめ、理由を話した。ドンと構えてれば、と言ってもらえたけど、わたしがいることで今後も騒がれたりするなら……少しでも、離れたほうがいいって。


「もう、御曹司バレもわたしの貧乏も全てバレているけれど。少しでも皆に迷惑がかからないようにしたいの……」


冊子を強く抱くせいでメキッと音が鳴った。


「なるほど……小柳、目瞑れ」


目の前にいる颯くんの鋭い目に、わたしはゆっくり目を閉じた。御曹司バレも全部わたしのせいだから。叩かれるのは構わない。


「え、颯くん?ちょっと女の子相手に何す──」




「この……ばかっ」




だけど、痛みではなく温かいぬくもりがわたしへを包んだ。
< 210 / 244 >

この作品をシェア

pagetop