御曹司たちの溺愛レベル上昇中
──次、つぎ……っと。
今度は半分やりっぱなしのお化け衣装。これを作ればわたしの担当分は終わる。
また黙々と縫い始めれば……ふと、教室の隅でのことを思い出した。咲ちゃんと衣装作りをしていた時のことを。
照れくさそうに、でもどこか嬉しそうに、小声で颯くんのことを聞かれて……。
食べ物の好み、家ではどんな感じか、色々ってわけじよないけど、質問は結構された。ただ、わたしが答えられるものは少なかったと思う。
でも咲ちゃんはそれでもよかったみたい。
……やっぱりそのうち、というより文化祭をきっかけにして告白、するのかな──
「……っい」
ズレたとこに刺して、針が指に刺さってしまった。いけない、考え事をしては。
「おい、小柳っ見せろ」
「大丈夫ですか?僕、絆創膏持ってくる」
「血、出てない?」
「大丈夫。お、大げさだって針くらい。普段もチクチク刺しちゃうし」
「だめだ。見せろ」
「俺、針預かるよ」
指を刺したことで、急に慌ただしい空間になってしまった。