御曹司たちの溺愛レベル上昇中

***


あれからまた何度か指を刺してしまったりしたけど、無事全ての衣装は完成し、迎えた文化祭当日。
もう周りのぎこちなさはないから、わたしも普通にしてるけど、まだちょっと内心引きずっている。だけど、颯くんたちが大丈夫って言ってくれるんだもん。今はお化け屋敷のため頑張ろう。

自分に喝を入れ、朝から真っ暗な空間で最終準備。


「あの、琉衣ちゃん」
「ん?」


わたしも衣装を着て、おばけ役の配置へ行こうとしてるところに、正面から咲ちゃんが。


「どうしたの?」
「……その、文化祭終わったら、小鳥遊くんに、言おうと思って」


……やっぱり。文化祭を機に……何を言うのかなんて聞かなくても分かる。なんとなく、予想はついていたから。


「そ、そっか!その……頑張って」



頑張って──ってなんだろ。

言ってすぐ、自分から出た言葉なのに違和感を覚えた。
照れまじり頷き、笑って自分の持ち場へと戻っていく咲ちゃん。
その姿を暗い中見送り、わたしは自分の定位置にしゃがみ、胸に手をあてた。



──なんか……重い。
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