御曹司たちの溺愛レベル上昇中
「うわっ……響、お前」
「なんですか、おきゃくさま」
パンケーキが乗る皿を置いた顔とは裏腹に、響くんはあからさまに嫌な顔をする。
多分、颯くんが言いたいのはわたしのパンケーキのこと。写真とは違うデコレーションで、ハートがいっぱい散りばめられてるから。
「小柳にサービスってそれかよ」
「これだけは僕が担当したからね」
「……けっ」
「これも響らしいね」
颯くんは気に食わなそうにスプーンを手にして食べ始める。
「……すいませーん」
「はーい。じゃ、ごゆっくりー」
昼時もあって、執事喫茶は次第に混み始めてきた。写真撮ってる子もいる。
わたしも食べないと。
ハートだらけのパンケーキを一口。おばけ役のをした後に甘い物はとても美味しく感じられた。
でも、ふとおばけ役のことを考えたら咲ちゃんのことが頭に過ぎり、手を止める。
颯くん、咲ちゃんと文化祭後の約束、とかしたりしたのかな。じゃないと言うタイミング作れないだろうし。
「……んー」
「どうしたの、颯」
「味、小柳の方がうまいなって」
「確かに。今の俺たちは琉衣ちゃんの味が染み付いてるもんね」
「そうそう」
でもこの感じだといつも通り……咲ちゃんはまだ──
「小柳?どした?」
「えっ……な、なんでもっ。このパンケーキ美味しいなって」
「……ふうん?」
いけない。ボーっとしちゃった。
咲ちゃんのこと勘付かれたりしたらだめだもの。普通にしないと。