御曹司たちの溺愛レベル上昇中


『お住まいをお探しで?』


ご老人は拾った紙をわたしに渡してくれた。


『あ……まぁ、そうなっちゃいますね』

自分のことなのに、どこか他人事みたいな言い方をしてしまった。
それだけ、わたしの中で受け入れがたいということなんだろうな。

『ふむ……』
『……えっとすいません、そろそろわたし学校行かないと……本当にありがとうございました』

少し良くなった体の震え。
会釈をして、わたしは歩き出した。


『お待ちくださいな、お嬢さん』


だがご老人に止められ振り返る。

ご老人はわたしに歩み寄り、スーツのふところから何かを取り出した。そしてわたしに差し出した。


『名刺……?』
『わたくし、こういうものでございます。諸事情があり今は退いておりますが……』

名刺に書かれていたのは、大手企業のグループ名と電話番号 ご老人の名前に──



しゃ、社長秘書!?


わたしは名刺からご老人に目をやった。

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