御曹司たちの溺愛レベル上昇中
二人の言い合いに背を向けて自室に向かったわたし。
「あ」
「……あ、お帰り」
「雪さんもお帰りなさい」
今帰って来たのか、部屋に入る寸前の雪さんとばったり。
だけど、良く見れば雪さんの手が土だらけで……
「あの、雪さんその手──」
どうしたんですか、一歩近付いてそう言おうとした……でも雪さんに遮られてしまった。
「お、俺には関わらないで欲しい……」
大丈夫だから──パタンとゆっくり閉められたドア。
わたしが雪さんに伸ばしかけた手は、そのまま力なく垂れた。
初めて会った時から、小鳥遊くんや響くんみたいな会話のテンポというか……
これ以上は来ないで、聞かないで、みたいな雰囲気があるように感じてはいたけど。
「関わらないで欲しい、か」
これはなかなか難しい。同じ屋根の下で、関わらない、というのは。
焦らず頑張ろ。無理に近寄ろうとすると、避けられちゃうかもしれないし──