バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます




拓翔は着替えもせず、そばに置いていた荷物をつかむと駆け出していた。
駐車場に置いていた愛車をスタートさせたが、太田家の場所は詳しく知らない。
だが、前に香耶から世田谷だと聞いていた記憶がある。

首都高速に乗る前に、不動産会社に勤めている母にブルートゥースで電話をかけた。

『もしもし』

「忙しところ申し訳ない。太田ヘルスケアホールディングスの社長の住所を調べて欲しい」
『……住所だけ? 地図もいる?』

拓翔の固い声になにかを察したのか、母親はすぐに調べたようだ。

「両方のデータを送ってほしい」

『了解』

さすが不動産会社の部長は情報が早い。すぐに届いたので、カーナビゲーションに転送する。

嫌な予感というのは当たるものだ。
香耶には注意してくれと話していたが、まさか太田洸太郎が直接病院に来るのは想定していなかった。

「たしか祖母が恵子と言ったか」

以前に香耶が離れで看護していたはずだ。
その名前を出されたら、香耶なら心配になってしまっただろう。

夕方の混みあう時間より少し前だからか、車は順調に流れた。
一分でも早く着くように、いつになく拓翔はアクセルを踏み込んでいた。

高速を降りたところで、拓翔の車を救急車が追い越していった。
急患だろうかと見送ったら、どうやら向かう方向が同じだ。

太田家に着いてみたら、救急車から隊員たちが降りて屋敷の中に入って行くところだった。
どういう偶然かわからないが、中に入るチャンスだ。




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