バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます




「祖母は三年前に倒れて、半身が不自由だ。軽い言語障害もある」
「は、はい」

「君はこの離れに住んで、祖母の面倒をみてくれ」

面食らっている香耶を前に、洸太郎は淡々と話を進めていく。

恵子の病状、かかりつけの医師の名前や通いの家政婦がいること。
当面の生活費やら保険証を渡されても、香耶は事情がのみ込めない。
目の前のベッドにいる恵子もキョトンとしたままだ。

「私は仕事が忙しいし、両親も祖母の面倒はみられない」

恵子の世話をするのは構わないが、香耶は看護師の資格はあるが介護は専門ではない。

「他人を屋敷に入れたくないし、施設に入れるのは太田家として身内を粗末にするようで外聞が悪い」

だんだん香耶にも洸太郎の言いたいことがわかってきた。

軽い脳卒中で倒れた恵子は、リハビリをしてもあまり回復しなかったのだろう。
太田家は医療業界で有名だから「大切な家族は在宅で看護している」という形を取りたいのだ。

「だからこれは契約だ。古泉製薬を助けるかわりに、看護師の君と結婚した」

思わず息をのんだ香耶を見て、洸太郎は満足そうだった。

「このことを、家族は……」
「ああ、君のお義母さんは知っているはずだ」

自分が選ばれたのは、太田家で恵子の介護をする者が必要だったからだ。
やっと香耶にもこの結婚の意味が腑に落ちた。

看護師の香耶に妻という肩書きを与えて、世話を任せておけばいいと考えたのだろう。
麻友ならこんな環境に我慢できないだろうから、義母は先妻の娘の香耶に押し付けたのだ。
もしかしたら洸太郎は、香耶が家族と疎遠だということまで調べていたのかもしれない。




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