バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます


沙織は、洸太郎の腕にしがみついたままだ。

「離婚には両親も納得してくれた」
「はい」

洸太郎の両親は、ほとんど離れに顔を見せたことがなかった。
彼らも香耶のことを、嫁ではなく看護をするだけの存在だと認識していたようだ。
事情を知らない人から見れば、自分は二年経っても子どもが産めない嫁だ。無用だから離婚されたと思われるだろう。

早くひとりになりたくて、香耶は黙って聞いていた。
洸太郎の名ばかりの妻の役目が終わるのだから、じわじわとうれしさが込みあげてくる。

だが離婚を告げられても淡々としている香耶が、沙織には面白くなかったらしい。

「家のために洸太郎さんを縛りつけていたなんてひどいわ。もう私たちの邪魔はしないでください」

縛りつけてもいないし、ふたりの邪魔もしていないのに、まるで香耶が悪者のような言い方だった。
沙織はとうとう「子どもに罪はないの」と泣き出してしまった。

本来なら取り乱すのは沙織ではなく香耶のはずだが、涙すら出てこない。
わずか二年の結婚生活の間に、香耶の心は乾ききっていた。

なぜか洸太郎は恋人が泣いているのを、黙ったままうんざりとした顔で眺めている。
ふたりの間には愛があるはずなのに、洸太郎の態度には違和感があった。







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