バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます
拓翔の好意だとしても、なんの関係もないふたりが同じ場所で暮らすのはおかしな話だ。
「そんなことできません。私はただの看護師ですから」
拓翔は深い意味もなく口にしたのだろうが、これから同じ病院で働くのだから慎重になるべきだ。
同じ場所に住んでいるなんて、もし病院に知られたら大変なことになる。
「悪い。つい焦って、先走ってしまった」
交際を申し込まれたり、同居を提案されたりして、香耶の心は拓翔にかき乱されている。
ふと、香耶は思い出した。
佐和がかつて、「拓翔にいい人がいたらいいの」にと言っていたことを。
きっと佐和が望んでいる拓翔の結婚相手は上品な令嬢で、初婚のはずだ。
拓翔に交際を申し込まれたとき、とてもうれしかった。
それに拓翔と暮らした日々の楽しさは忘れられない。
だが、香耶ではだめなのだ。
「俺は、君に頼って欲しかっただけだ」
拓翔は意外な言葉を口にした。
「頼る……」
「君はなんでもひとりで抱えてしまう。俺くらいには頼ってもいいんじゃないかと思ったんだ」
これまでの香耶の態度から、拓翔はなにかを感じてくれていたようだ。
誰にも頼れない環境で生きてきた香耶には、思いがけない言葉だった。
「香耶、付き合おうと言った俺の気持ちは、あの夜だけの気の迷いなんかじゃない」
「私は……」
しまい込んだはずの拓翔への気持ちが、また浮きあがってくる。
「君への気持ちは変わらない」
拓翔の真剣な眼差しに、香耶はもう隠しきれないと悟った。
「あの言葉は、私の支えです」
正直な気持ちを拓翔に伝え、香耶は頬に熱が集まってくるのを感じた。
「俺のそばにいて欲しい」
けれど、今すぐに拓翔に飛び込んでいく勇気が持てない。
「うれしい。とってもうれしいんです。でも……」