バツイチナースですが、私を嫌っていた救急医がなぜか溺愛してきます



別のところで作業していた看護師たちにも聞こえたのか「まあ」「知らなった」と、思わず声をあげている。
佐原はニンマリと笑いながら、「ひどい男と別れて正解だったね」と周囲に聞こえるように言って笑っている。

つられて、香耶も笑顔になれた。
佐原のおかげで、別れてよかったんだと今さらのように思えた。

その日から、うわさは自然に消えていった。
どうして「夫が浮気した」と知っていたのかとあとで聞いてみたら、適当に言ったらしい。

「図星だったのか! 悪かった」と、逆に恐縮されたくらいだ。

「離婚なんて、特に珍しくもないさ」

そう言って佐原が笑ってくれると、気持ちが軽くなってくる。

日ごとに職場で香耶の笑顔も増え、誰とでも自然に会話できるようになった。
香耶の真面目な仕事ぶりも評価され、頼りにされ始める。
仲間意識が芽生えてからは、疲れた日には同僚と一緒に外食したり、飲み会に誘われたりするほど仲よくなれた。

看護師として働きながら、ひとりで生活をすること。
仲のいい友人と、気軽に出かけること。
忙しすぎる日もあるが、そんな当たり前の毎日が新鮮だった。
気がつけば洸太郎と結婚したときに諦めていたことを、すべて楽しめるようになっていた。



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