メガネを外したその先に
いつもより、先生の声色が柔らかい気がする。

それはきっと、私が風邪を引いて弱っているから。


「風邪なおったら、デートしてくれる?」


それを何となく感じでいたにも関わらず、その優しさに漬け込む私は狡い。

でも、そうでもしないと一生首を縦になんて振ってもらえなさそうだから許して欲しい。


龍弥先生の瞳が、メガネ越しに揺れている。

紡がれる言葉を待つ時間は、熱に侵されているせいもあっていつもより無駄な緊張をしなくて済んだ。


「…考えとく」
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