メガネを外したその先に
いつもは足早に帰る子たちも、今日だけはみんな名残惜しそうに教室に残っている。

その光景を横目に教室を出ると、廊下に立っていた早紀と桃と目が合った。


二人の視線が、気まずそうに泳ぐ。


何か言葉を掛けるべきなのだろうか。

頭の中で自問自答しながらも、沈黙を破る勇気が出なくてその場で立ち尽くす。


「…希、ごめんね」


沈黙を最初に破ったのは、桃だった。

今にも泣きそうな声で紡がれた謝罪の言葉だけど、それが私の胸に深く刺さることはない。
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