メガネを外したその先に
「余計なお世話だ」

「先生って、頭で恋愛しそうだもんね。恋愛は、“ここ”で感じるものだよ。」


そう言いながら、彼女が自分の胸を叩く。


「理想がどうとか条件がどうとか、そういうことに囚われないで自分の感覚を信じなきゃ。」

「教師相手に随分と偉そうだな」

「だって、恋愛においては先生より私の方が経験ありそうな気がしたから。」


それは、“経験”というものを何でカウントするかによると思う。

“数”でカウントするのならそれなりに経験はあるが、彼女の言うように頭ではなく心で動いたことは、今までの人生を思い出す限りなかったかもしれない。
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