メガネを外したその先に
受験で大事な時期に、それ以上何も言えなかった。


ただ、俺が貰うはずだった物を風間が持っていた事実が受け入れ難い。

純粋な気持ちで“好きな子”と言った風間の声が、俺の中で何度も反芻して仕方ない。


それならどうしたら良かったんだと、自分自身に問うても答えなんて出るはずもなく。

家に帰ってから珍しく開けたウイスキーに酔い潰れ、翌日は二日酔いに悩まされた散々な一日だった。


…こんな思い出一つも、俺の中に残り続ける。


何度も思い出す光景は、より鮮明に脳裏に焼き付く。

こうやって俺は、何年経っても長谷川のことを思い出すのだろうと思った。
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