メガネを外したその先に
信号で立ち止まっている間に雨が大粒になってきて、鞄を頭の上に乗せたけれどみるみるうちに制服に雨粒が染み込んでいく。


駅までの距離は、もうあと少し。

ビニール傘を買うには惜しい距離。


悩める私の隣にできた影と共に、頭上に紺色の傘が差し出された。


「駅まで入れてやる」


隣を振り返ると龍弥先生が立っていて、私より頭一つ分は大きい先生が手に持つ傘の下に収まる。


「ありがとうございます」


信号が赤から青に変わるのを待って、歩き出す。
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