【ご令嬢はいつでもシリーズ5】悪役令嬢の厄落とし! 一年契約の婚約者に妬かれても、節約して推しのライブ予約してあるので早く帰りたい。だめなら胃腸薬ください!


「あ、い、いえ……。お、お嬢様が私にお礼とおっしゃってくださったのは、初めてだったものですから……」

 え、そうなの?
 あれ、もしかして、貴族って使用人にいちいちお礼とか言わない感じ?
 ヘティが珍しそうに私をとくと見たあと、お皿を片付けた。
 それより、どうしたらいいのかなぁ、これから。
 二か月後にはライブがある。
 それまでには絶対に帰りたい。
 それには、なにをどうやったらいいんだろう。
 うーん……。

「ねぇ、ヘティ」
「はい、お嬢様」
「私が倒れたときのこと、詳しく教えてくれる?」

 そう、考えられる第一の可能性は、このベアトリスが倒れたときのことをもう一度再現すること。
 確かなんとかの大階段で倒れたとか言ってたよね。
 ヘティが言いにくそうによどんだ。

「……なにも覚えていらっしゃらないのですね……。確かに、お嬢様にとってはお辛いことでしたから」
「そう、なにも覚えてないのよ。だから、初めから全部、すっかり教えてくれる?」
「わかりました、でしたら……」
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