【ご令嬢はいつでもシリーズ5】悪役令嬢の厄落とし! 一年契約の婚約者に妬かれても、節約して推しのライブ予約してあるので早く帰りたい。だめなら胃腸薬ください!
「あなたに信じてもらうためなら、なんでもする。だから、お願い。私を王宮の大階段に、連れて行ってもらえないかなぁ……!?」
熱心な様子で見つめるベアトリスの瞳。これほどまでに真っ直ぐにこの瞳を見たことはなかった。確かに、今見る限りに、彼女の瞳には嘘がないように見える。
だが、そう簡単に信用することなどできない。
これまでのベアトリスの行いや評判は、この一時の会話によってすべて浄化できるようなものではないのだ。
ベアトリスの目的が何なのかはわからない。だが、王宮の大階段、そこへ連れて行くことは避けたほうがよさそうだな。
とすると……。この茶番の筋書きからすれば、ベアトリス、いやヨウコは元のニホンへ戻ることができればそれでいいのだから……。
俺は、コホンと喉を鳴らした。