【ご令嬢はいつでもシリーズ5】悪役令嬢の厄落とし! 一年契約の婚約者に妬かれても、節約して推しのライブ予約してあるので早く帰りたい。だめなら胃腸薬ください!


 ベアトリスが身を乗り出してきたところで、俺は体を引いた。
 ふん、呪文など、そんなものあるはずがない。
 茶番にはさらなる茶番を与えてやるまでだ。
 
「俺の故郷の屋敷にその記録が残っていたはずだ。取り寄せるには少し時間がかかるが」
「ああ、エバン! はあ~っ! 思い切ってあなたに包み隠さずすべて話してよかった!」

 まるで本当に喜んでいるかのように、頬を染めて歓喜に目を潤ませているベアトリス。女というものは恐ろしいものだ。憎き者をいたぶろうと氷のように冷たい目ができる一方で、このように無邪気な少女を演じることもできるのだから。
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