天色ガール【修正版】



「ちょ、ちょっと輝! 説明がなくて雨貝さん困ってるから!」



 輝の予想外の発言にポカンと口を開けて固まっていると、焦った想乃がそう言って彼の手を軽く叩いた。同時にあたしの腕が解放される。


 そ、そうだよね。説明が全然足りてなかったよね。でも今はそんなことよりも────



(バレてなかった……!!)



 よかった、本当に安心した!


 今まで正体が見破られたことなんて一度もなかったけど、『白石 輝』には特に注意しよう。



「──それで、なんで姫に?」



 あたしは再び彼らの方に体の向きを変え、その場に座り直す。


 想乃は「どこから話そうかな」と一瞬考え込んでから、輝の突破な発言の理由を話し始めた。



「姫というか、“仮の姫”って感じなんだけど……実は雨貝さん、今他の族から狙われてるんだよね」


「…………なんで?」



 本気で意味がわからない。


 この学校に来てまだ二日しか経っていないのに、なんであたしが族から狙われることになるんだ。


 “何言ってんだこいつ?”そんな顔をすれば想乃は苦笑して。



「誰かに五閃のことを聞いたなら、五閃が関東一の暴走族“閃光”のトップだってことも知ってるよね?」



 その問いかけに、あたしは頷く。



「俺たちは今まで、閃光のメンバー以外はこの屋上に入らせたことがなかったんだ。だけど昨日、雨貝さんが屋上に入ったところを偶然通りがかった生徒に見られていたらしくて──」



 ……なるほど。


 彼の言いたいことは大体わかった。つまり、



「その生徒があたしのことを閃光にできた“姫”だと勘違いして、その情報を広めてしまった。それを知った他の族が関東一の座を奪おうと、弱点である“姫”を狙ってくる。だからあたしを“仮の姫”として守ってくれる……ってこと?」



< 40 / 115 >

この作品をシェア

pagetop