リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
「それじゃあ私のお願いをひとつ叶えてくれたら結婚してもいいよ」
「願い?」
交換条件を持ちかけると涼成くんは静かに頷く。
「わかった。どんな願いだ?」
目に入ったのはテレビ台に飾ってある一枚の写真。両親が生きていた頃に三人で旅行をした場所で撮ったものだ。
「北海道に連れていってくれたら……」
写真をよく見ると日付が載っていて、旅行は二十年前のちょうど明日。
「明日の夜。函館山からの夜景を私に見せてくれたら涼成くんの願いも叶える」
子供の頃に両親と見た函館山からの夜景を再び見たいのは本当だ。
でも、それを見るために北海道に連れて行ってくれたからといって結婚する気はない。
そもそも明日なんて急には無理だろう。だからこそ結婚を諦めてもらうためにわざと無理難題を突き付けたのだから。
「わかった」
涼成くんが静かにそうつぶやいてから席を立つ。
「帰るの?」
「ああ」
玄関に向かって進んでいく彼の背中を追いかける。靴を履き、扉に手をかけたところで彼が振り向いた。
「約束は必ず守ってもらうからな」
そう言い残して、涼成くんは私の家をあとにした。