リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
「そうだな。子供の頃に比べて知識を得たし、経験も積んで実力もついた。祖父に対抗できるだけの自信がついたから、あの頃のように言いなりにはもうならない」
きっぱりとそう言い切った涼成くんの目には強い意志が宿っているように見えた。
以前、彼は自分が変わった理由として〝変わらざるを得なかった〟と言っていた。
それは、大企業TAKIGAWAホールディングスを経営する多岐川家の跡取りとして相応しくなるためには必要なことだったのかもしれない。
「それに、俺にはあと一年しかないんだ」
「えっ」
呟くような声で聞こえた言葉にすぐさま反応する。
「どういう意味?」
「いや、なんでもない。それよりももうすぐ着くぞ」
気が付くと自宅マンションの近くまで来ている。
「今度婚姻届を取りに行ってくる。この期に及んでやっぱり結婚はやめるとか言うなよ」
「い、言わないよ」
とはいえ、涼成くんの縁談を断る手助けのためだけに結婚してもいいのか今も迷ってはいる。
それでもご両親への挨拶もすませてしまったし今さら引き返すことはできない。
それに、涼成くんと結婚をすれば駒井家との繋がりが今よりも薄くなるかもしれない。彼との結婚を決めたのにはそんな思いもあった。