リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
柚葉は毎日弁当を持参している。今朝も早起きしてキッチンで料理をしていた。
ひとつもふたつも同じだからと俺の分も作ろうかと提案はされたが、負担になると思い断った。
「奥さんには優しいんだな。ま、会長が持ってきた縁談を拒んでまで手に入れたかった初恋相手なんだから当然か」
琢磨が俺の反応を見るようにニヤリと笑う。
「ここで仕事の話以外をするつもりはない。用事がすんだら退室してくれ」
応接用のソファから立ち上がる。執務デスクへと向かい、チェアに腰を下ろした。
「相変わらず愛想がないし冷たいな。昔のお前はどこに行っちゃったんだろうな」
ぼやくように言いながら琢磨が席を立つ。
「そんなんじゃ愛しの柚葉ちゃんに嫌われるぞ」
「余計なお世話だ」
琢磨を見る視線が鋭くなる。けれど、お調子者のこいつがそんなことで怯むわけもなく、「おー、こわ」とわざとらしくこわがる素振りを見せて扉へと向かう。
「お昼はしっかり食べろよー。会議の時間になったら迎えにくるからな」
そう言い残して、琢磨が役員室をあとにした。
再びひとりきりになると静寂に包まれる。執務チェアの肘置きで頬杖をつきながら深くため息を吐き出した。