リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~


俺が十三歳で、柚葉が十歳の頃。

俺の母親が突然の病に倒れ、長期入院することになった。

空気のきれいな場所にある病院での治療が効果的だと言われ、母は隣県の病院に入院した。頻繁にお見舞いには行けない距離だ。

当時中学生だった俺は電車を乗り継げばひとりでも病院に行けたが、大人の付き添いがなければ行ってはいけないと祖父にきつく言われていた。

おそらく多岐川家の跡取りである俺の身を案じてのことだろう。祖父がこわかった俺はその言いつけを守っていた。

けれどある日、母の容体が急変したと連絡を受けた。

心配ですぐに会いに行きたかったが、付き添ってくれる大人が見つからず病院へは行けそうになかった。

一瞬、ひとりでも行ってしまおうかと思ったが、祖父の言いつけがあるためそれはできない。

バレたら怒られる。それがこわかった。

でも、母が心配で今すぐに会いに行きたい。

そんな葛藤を抱えながらひとりで悩んでいる俺に気づいた柚葉が、俺の背中を力強く叩いて笑顔で言った。

『涼成くん。お母さんが心配なら絶対に会いに行った方がいいよ』

柚葉の手が俺の背中にそっと触れる。

『私は会えなかったから』

そう話す彼女がどこか寂しそうに笑ったのを覚えている。


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