リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
柚葉がなにを言いたいのかすぐに理解ができた。
彼女は俺と出会う前に母親を病気で亡くしている。長い間、入退院を繰り返していたそうだ。
亡くなる直前に会うことができなかったと聞いたことがあったので、おそらくそんな自分の経験を踏まえての言葉だろう。
『私が一緒に行ってあげる。涼成くんのおじい様にはふたりで怒られよう。それならこわくないでしょ』
柚葉は俺がひとりで母の病院へ行くのを禁止されているのを知っている。俺が祖父を極端に恐れ、言いつけを守っていることも。
俺なんかよりも何倍も強い柚葉に背中を押されて、俺は初めて祖父の言いつけを破った。
『母さんに会いに行く』
祖父なんてこわくない。怒られても後悔はしない。それよりも今は母に会いたい。
こうして俺と柚葉は電車を乗り継いで、母の入院している隣県の病院へと向かった。そして、無事に母に会うことができた。
容体が急変したと聞いて心配だったが、母の顔色は思ったよりも良く安堵したのを覚えている。
病院には一時間ほど滞在して、再び電車を乗り継いで帰宅。時刻はすでに遅く、辺りは真っ暗になっていた。