リベンジ溺愛婚~冷徹御曹司は再会した幼馴染を離さない~
その後は連絡が取れなくなり、柚葉とは会えなくなった。
幼い頃に母親を失くし、唯一の家族で会った父親も失って、ひとりぼっちになった柚葉が寂しい思いをしていないだろうか。
親戚に引き取られてからはどんな生活を送っているのだろう。
柚葉のことが気になったし、どうにかして会えないだろうかと考えたこともあった。
けれど、そんな気持ちは次第に薄れていく。
TAKIGAWAホールディングスの跡取りとしての祖父による指導がいっそう厳しくなり、俺は自分のことで手一杯になってしまった。
これまで俺が祖父の厳しいしつけに耐えられたのは柚葉がいたから。
明るく、前向きな彼女と話すと勇気をもらえたし癒されもした。
けれど、柚葉と会えなくなり、唯一の心の拠り所を失った俺は次第に塞ぎ込むようになった。
その頃からだ思う。性格が少しずつ変わっていったのは。
周囲からなにを言われてもなにも感じなくなったし、なにを見ても、なにを聞いても心が動かない。
感情が抜け落ちたような感覚だった。
でも、その方が生きるのには楽だった。
恐怖の対象でしかなかった祖父の存在も以前のように恐れることはなくなった。