冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
それがわかっているのに触れたい気持ちが膨れ上がり、このままでは傷つけてしまうと恐れた。

(葵を守ってきたつもりだったが、今一番危険な存在は俺だろう。傷つけたくない。不自然に思われないよう、少しずつ距離を取らなければ)

会いたい気持ちに蓋をして五分ほど歩き、自宅のあるマンションに着いた。

1LDKの部屋は物が少なく寂しい印象だが、自宅で過ごす時間が少ないのでこれでいい。

シャワーを浴びて着替えをし、すぐにマンションを出て庁舎へと急ぐ。

その間も葵のことを考えていると、スーツのジャケットの内ポケットで私用の携帯が震えた。

信号待ちで確認すると葵からメッセージで、途端に心臓が大きく波打った。

(なにがあった?)

喜びよりも心配が先に立つ。

葵から連絡をくれることは滅多にないからだ。

急いで読むと予想外の内容で驚いた。というより意味がわからない。

柄と色を相談されたが、なにについてなのかが書かれていなかったからだ。

二度三度、読み返して眉根を寄せていると、後ろから声がかかった。

「加賀見、信号とっくに青だけど」

横に並んだのは井坂だ。

コンビニ弁当やパン、ペットボトルの飲み物が入ったレジ袋を提げているので、夜食を買って庁舎に戻るところなのだろう。

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