冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
爆発事件のあとに殺人事件が二件発生したので、一課もなかなか忙しそうだ。

「おつかれ」

「お互い様だね。デートの予定も入れられない。それ、私用の携帯? 難しい顔でなに見てたんだ?」

「大したことじゃない」

「嘘だね。お前が眉間に皺を寄せている時は大抵、葵ちゃんがらみで悩んでる。葵ちゃんから早速――じゃなかった。久しぶりに連絡が来たんだろ?」

「おい!」

携帯を持つ手を捻られ、強引に画面を覗き込まれた。

「ん? どういう意味?」

「わからない。だから考え込んでいたんだ」

赤に変わる前にと歩き出し、横断歩道を渡り切ったところで井坂が指を弾いた。

「そういう意味か。葵ちゃん、やるな」

再び足を止めると、井坂が目を弓なりにした。

「色と柄とレースと言えば、下着だよ。お前の意見が聞きたいって可愛い誘い方だな」

聞いた瞬間、目を剥いた。

(下着の相談? 男の意見が聞きたかったのか?)

「加賀見?」

「誰に見せるつもりで買おうとしてるんだ。まさか、俺に言わずに男と付き合おうと……」

「自分のためだとどうして思わない? おーい、聞こえてる?」

焦りに突き動かされるように歩調を速め、湧き上がる嫉妬と闘う。

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