冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
「井坂か。真に受けるな。実力があれば階級は上がる。昇進のために好きでもない女と結婚はしない」

「そっか。よかった……」

心底ホッして、その場にへたり込んだ。

二日間の苦しみと強い緊張から解き放たれると、半ば放心状態になる。

すると恋心を隠そうという気持ちが薄れ、素直な想いが口をついて出た。

「しばらく連絡がなかったから、本当に結婚するのかもってすごく不安だった。もう会ってくれないかもしれないと思って。お願い、これからも私のそばにいて」

涙腺が緩みそうで目頭に力を込めると、しかめっ面になってしまう。

ひどい顔を見られたくなくないのに、目の前に彼が片膝をついた。

「葵」

たくましい二本の腕が背に回され、心臓が大きく波打つ。

抱きしめられたのはいつ以来か。

子供の頃とは違い、無邪気に喜べない。

激しい動悸で息苦しくなりながら、動揺を深めた。

(この手の意味は……?)

兄以上の想いを感じるのは気のせいだろうか。

ワイシャツの襟元から香るのはボディソープとほのかな汗の匂い。

葵にはどんな香水よりもときめく香りで、恋心を制御できずに自分も腕を回してしがみついた。

すると微かに息を飲むような音がして耳元で囁かれる。

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